問題
次の文章を読み、後の設問1〜3に答えなさい。
新しい技術や製品を生み出すには、長い時間と多額の費用がかかることがある。それにもかかわらず、完成した技術をほかの企業がすぐにまねできるとすれば、開発した側は投じた費用を回収しにくい。苦労して技術を生み出しても利益につながらない状況が続けば、企業や研究者は新しい開発に取り組みにくくなる。そこで、発明者に一定期間、発明を独占的に利用できる権利を認める特許制度が設けられている。
特許を取得した発明者は、他者がその技術を無断で製造・販売することを制限できる。この権利によって、発明者は製品を販売したり、他社に使用を許可して対価を得たりする機会を持てる。新しい技術の開発に取り組んだ人へ利益を得る可能性を与えることは、次の発明を促すうえで重要である。
しかし、特許制度は、発明を他人から完全に隠すための仕組みではない。特許を取得するためには、原則として、その技術の内容を一定程度公開しなければならない。公開された技術情報は、ほかの研究者や企業が新たな研究や改良を進める際の参考になる。さらに、特許の保護期間が終われば、その技術を広く利用できるようになるため、社会全体に知識や技術が蓄積されることにもつながる。
この点で、特許制度には、一見すると反対に見える二つの働きがある。発明者には一定期間の独占を認める一方で、技術の内容を社会に公開させるのである。もし独占だけを認め、技術の説明を求めなければ、発明者は利益を得られても、知識が社会に共有されにくくなる。反対に、開発した技術をすぐに誰でも自由に使えるようにすれば、発明者が費用を回収できず、技術開発そのものが減る可能性がある。
もちろん、特許による独占が長すぎたり、権利の範囲が広すぎたりすれば、新しい製品の開発や市場への参入を妨げることもある。また、一つの製品に多数の特許が関係している場合、誰から許可を得ればよいかを確認するだけでも大きな負担になる。そのため、発明者の利益を守ることと、ほかの人が技術を利用して改良や競争を進められることとの間で、適切なバランスを取る必要がある。
特許制度の目的は、単に発明者へ特別な権利を与えることではない。一定期間の保護によって発明への意欲を支えると同時に、技術を公開し、将来の研究や利用へつなげることで、社会全体の技術的な発展を促すことにある。制度を評価するときには、発明者がどれだけ利益を得たかだけでなく、その技術が公開され、次の研究や製品にどのように生かされたかも考える必要がある。
【設問】
本文によれば、特許制度で技術の内容を公開することが求められる理由として、最も適切なものを、次の選択肢1〜5の中から1つ選びなさい。
- 公開された情報を研究や改良に生かし、将来はその技術を社会で広く利用できるようにするため。
- 発明者が、その技術から利益を得られないようにするため。
- 特許を取得した技術を、直ちに誰でも自由に製造・販売できるようにするため。
- 発明者が開発にかけた費用を、社会全体で負担するため。
- 技術の内容を公開すれば、独占的な権利がなくても発明者を十分に保護できるため。
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【解答】
1
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解説
設問1
本文では、特許を取得するためには、原則として技術の内容を一定程度公開する必要があると述べています。
公開された情報は、ほかの研究者や企業が新しい研究や改良を進める際の参考になります。また、保護期間が終わった後には、その技術を社会で広く利用できるようになります。つまり、技術の公開には、現在の研究を助ける役割と、将来の利用へつなげる役割の両方があります。
2は、特許制度が発明者に利益を得る機会を与えることと反対です。3について、技術が公開されても、保護期間中は無断で製造・販売できるわけではありません。4は、開発費を社会全体が負担する制度ではないため誤りです。5も、公開するだけで発明者を保護できるとは本文に述べられていません。
したがって、正解は1です。
設問2
独占だけを認めて技術を公開させなければ、発明者は利益を得られても、その技術に関する知識が社会へ共有されにくくなります。
一方、開発した技術をすぐに誰でも自由に使えるようにすれば、発明者が開発費用を回収できず、新しい技術を生み出す意欲が低下する可能性があります。
この対比は、発明者の利益と技術の共有のいずれか一方だけを重視するのではなく、両者のバランスを取る必要があることを示しています。
1は、技術公開の意義を否定しているため誤りです。2は、特許制度が開発費そのものをなくす制度ではないため誤りです。4は、発明者が費用を回収できない問題を無視しています。5は、本文では技術の公開が次の研究や製品開発に役立つとされているため誤りです。
したがって、正解は3です。
設問3
本文では、特許制度には二つの役割があると説明されています。
一つは、発明者に一定期間の独占的な権利を与え、開発費用を回収する機会を確保することです。もう一つは、技術の内容を公開し、研究や改良に役立て、保護期間の終了後には社会で広く活用できるようにすることです。
発明者の保護だけを重視しても、技術の自由な利用だけを重視しても問題が生じます。そのため、両者のバランスを取り、次の研究や製品開発につなげることが重要です。
1は、競争を避けることだけが制度の目的ではないため誤りです。3は、特許を全面的に廃止すべきだという主張ではありません。4は、技術公開後の活用も評価すべきだとする本文に反します。5も、技術を公開することの意義を否定しているため誤りです。
したがって、正解は2です。
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