問題
次の文章を読み、後の設問1〜3に答えなさい。
自然環境や地域の変化を詳しく調べるには、広い範囲で長期間にわたって情報を集める必要がある。しかし、専門の研究者だけで、すべての場所を継続的に観察することは難しい。そこで、地域の住民や一般の参加者が、生き物の分布、開花の時期、天候、身近な環境の変化などを観察し、研究に必要な情報を提供する市民参加型の調査が行われている。
この方法には、多くの場所から短期間に情報を集められる利点がある。たとえば、ある昆虫が見つかった場所と日時を多数の参加者が報告すれば、その昆虫の分布がどのように変化しているかを調べる手がかりになる。また、参加者が地域の自然に関心を持ち、環境の変化へ気づきやすくなるという効果も期待できる。調査に参加すること自体が、科学や地域への理解を深める機会になるのである。
一方で、集められた報告をそのまますべて同じように扱えるとは限らない。参加者によって観察経験が異なり、似た種類の生き物を取り違えたり、数え方が異なったりする可能性がある。また、参加者が多い場所からは報告が集まりやすいが、人が少ない場所や行きにくい場所では、実際に生き物がいても報告されないことがある。報告数が少ないことが、その場所に対象が存在しないことを意味するとは限らないのである。
こうした問題を減らすためには、観察方法や記録項目をそろえる必要がある。写真を添付する、位置情報や観察時刻を記録する、見分け方を説明した資料を用意するなどの工夫によって、報告を確認しやすくなる。専門家が一部の報告を点検したり、同じ場所を複数の人が観察した結果を比較したりすることも役立つ。ただし、基準を複雑にしすぎれば、参加の負担が増え、報告する人が減る可能性がある。
市民参加型調査で重要なのは、参加者が多いことだけではない。どのような方法で情報が集められ、どの地域や時期に報告が偏っているかを理解したうえで、結果を解釈する必要がある。専門家による調査と市民からの報告は、どちらか一方が他方に取って代わるものではない。市民の幅広い観察と、専門家の確認や分析を組み合わせることで、単独では得にくい知識を生み出すことができるのである。
【設問】
本文によれば、市民参加型調査の利点として最も適切なものを、次の選択肢1〜5の中から1つ選びなさい。
- 参加者が増えれば、観察方法の違いを考慮する必要がなくなること。
- 専門家による調査をすべて廃止できること。
- 誰が観察しても、対象を誤って記録する可能性がなくなること。
- 広い範囲から情報を集められ、参加者の地域や自然への関心が高まることも期待できること。
- 報告のない場所には、対象となる生き物が存在しないと判断できること。
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【解答】
4
解説
設問1
本文では、市民参加型調査により、多数の参加者から広い範囲の情報を集められると述べています。また、参加者自身が地域の自然や環境変化へ関心を持つ機会になることも期待されています。
1は、参加者が増えても観察方法や経験の違いを考慮する必要があるため誤りです。2について、専門家による確認や分析は引き続き必要です。3は、種類の取り違えなどが起こる可能性を無視しています。5も、報告がないことは対象が存在しないことを意味しません。
したがって、正解は4です。
設問2
市民参加型調査では、参加者が多い場所や訪れやすい場所ほど、報告が集まりやすくなります。そのため、報告数の差には、生き物の実際の分布だけでなく、観察する人の数や場所への行きやすさも影響します。
この記述は、報告の数をそのまま対象の多さや存在の有無と考えてはいけないことを示しています。
2について、本文は人の少ない場所での観察を禁止していません。3は、生き物の分布と報告の集まり方を混同しています。4は、観察されていない場所の状況まで分かるとする点で誤りです。5も、報告の偏りを考慮する必要があるという本文に反します。
したがって、正解は1です。
設問3
本文は、市民参加型調査の利点だけでなく、参加者の経験差、観察方法の違い、報告地域の偏りといった課題も指摘しています。
これらの課題を減らすためには、記録方法をそろえ、写真や位置情報を付け、専門家が報告を確認する必要があります。ただし、参加条件を複雑にしすぎると、参加者が減る可能性もあります。
したがって、市民の観察と専門家の分析のどちらか一方だけに頼るのではなく、それぞれの特徴を生かして組み合わせることが重要です。
1は参加者数だけを重視しているため誤りです。2は一般の参加者を排除する考えであり、本文と一致しません。3は市民の情報を全面的に否定しています。4も、専門家より市民を一律に優先する内容であり、本文の主張とは異なります。
したがって、正解は5です。
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